透析する目的は?

2008/9/2 火曜日

某掲示板で繰り広げられた(もはや過去形 :) )血液流量に対する議論ですが,ここでもちょっと考えてみたいと思います。

そもそも,透析する目的は何か?

こう考えてみると,「何々が標準だ」とか「エビデンスは」等という議論は無意味な感じがします。そう言う話は学者さん達で賑わっておればいい。そう思いません?

透析する目的は「腎機能を失した患者が,健常者並の生活(人生)が送れること」ですよね。

透析治療を受ける中で,「疲れ易い」「息切れがする」「血圧が高い」「汗が出ない」「浮腫が出る」「皮膚掻痒感」「足のイライラ」「関節が痛む」「血色が悪い」等と言った症状を如何に和らげるか,解消していくか。それが目的。

ここに一人の患者がいます。毎日涙ぐましい努力をしながら食事制限を克服し,体重増加も1kg未満。スタッフから「よく頑張っておられますねぇ」「その調子だと,週2回透析で済みますよ」と励まされる。

そうして,透析が始まると,彼の患者はいろんな不定愁訴を訴える。

スタッフは「足を上げましょうか」「温度を下げると血圧が安定しますよ」「何某さんにはこの血流量はきつすぎますねぇ,150ml/minに下げましょう」「何某さんは頑張っておられるから,ムリをしなくても良いですよ。今日はここで(3時間半)終わりにしましょう」

こうして彼の患者は,「今日はラッキーだったなぁ。スタッフの皆さんも親切だしなぁ」と感謝しつつ,フラフラになりながら帰路につく・・・そして,次の透析日まで苦しい生活が続く・・・

こんな治療が,実は「現実」だったりするんです。透析治療という束縛から,少しでも逃避できるようにと言うのが治療方針のように思えます。

さて,この患者さんはどうすれば「健常者のような生活」が送れるようになるでしょう。勿論,他の疾病は無いものとしてですが。

恐らくこの患者さんは「無理しすぎ」て,体力が低下し,長年の「透析不足」によるいろんな弊害が出てきているようです。勿論,本人はそんな風には思っていませんが・・・

透析不足から来る体調不良は,ついつい「透析するから辛い」と思うようになります。私もそうでした。

先ず,この「透析不足」→「体調が優れない」→「食事制限して頑張る」→「基礎体力が低下していく」→「透析が辛い」→「透析量を緩和する」→「透析不足」・・・と言う「魔の連鎖」から脱却しなければなりません。

一番良いのは腎臓移植でしょうが,ま,そんな夢のような話はおいといて・・・透析量を如何に「生体腎機能」に近づけるかと言う事になりますよね。

そこで第一に「回数」。これが一番手っ取り早くて最も効果が有るのですが,彼の患者さんは「透析が辛い」→「週2回になればいいなぁ」と思っています。なかなか週4回に応じないでしょう。勿論,医療機関側も,主に人員(人件費)の問題で週4回以上は行おうとしませんがね。

次に効果が期待できるのが「時間」。これまた,彼の患者は「3時間半」に縮まったことを「ラッキー」と思っているぐらいですから,ましてや4時間半以上に延長など考えても見ないことでしょう。更に,先と同じ理由で医療機関が4時間半以上に踏み切ることは期待薄ですが・・・

もう,こうなってくると為す術がありません。

いや,有るみたいです。「透析量」を増やせばいいのだから,回数と時間に制約があるのあるのなら「効率を上げる」と言う手が・・・この,効率を上げるというのは,例えばダイアライザーの表面積を多くするとか,血液流量を増やす等にあたりますが,体力が低下した彼の患者には,血液流量のアップにはついて来られないかも知れません。

血液流量を増やしたいが,血圧が低下するなどの副作用が見られる場合,如何に「穏やかに」透析を進めるか・・・これにピッタリなのが「HDF:血液透析濾過」と言う治療方法なんです。

HDだけだと,いろんな「電解物質」がゴッソリ抜けていきますから,体内がアンバランスになって「しんどい」となりますが,HDFの場合「血液を薄めてから透析する」或いは「透析してから血液を薄める」と言う効果もあって,体内のアンバランスが軽減されるみたいです。だから,血液流量が増やせる。

こうして,「HDFに切り換える」→「血液流量を増やす」→「透析効率が向上する」→「透析不足が少し改善される」→「透析が少し楽になる」→「体力が少し回復する」→「更に透析量を増やせる」→「透析効率が更に向上する」→「透析不足が更に改善される」となって,ついには「透析が楽だ」→「体力が出てきた」→「お腹が減って仕方がない」→「しっかり食べる」→「しっかり透析する」と言う連鎖が生まれて行くわけです。

もう,こうなってくると,彼の患者も「透析量を増やせば透析が楽になり,生活も普通に出来るみたいだ」と気付くようになり,時間延長や回数アップという欲も出てきます。体力が改善してきていますから,もはやHDFに頼らずともHDだけで血液流量アップに対応できる身体に戻っています。

こうやって考えてみると,そもそも「透析不足」にならなければ,こんな手順は踏まなくても良かったと言うことになるわけで,最初から「回数」,「時間」,「効率」を重視した透析治療を行えばいいと言うことになりますよね。

そうは言っても,生活している以上「時間的制約」はついて廻ります。

ですから,取り敢えずは「効率」を上げた透析を行って,更にもっとしっかりした透析を目指すという方向付けになるわけですねぇ・・・そう,先ずは血液流量をアップして体力維持を心がける。

なんで45kgと90kgの患者さんが同じ「200ml/min,4時間,週3回」透析なんでしょう?・・・もう,皆さんなら判りますよね,この間違い。これが「魔の連鎖」の始まりなんです。